いのちをめぐるエッセイ其の16 大切な方を亡くされた方へ 死別 遺族

大切な方を亡くされた方へ

『「さよなら」は別れの言葉じゃなくて、再び逢うまでの遠い約束♪』
昭和生まれには懐かしヒット曲、「セーラー服と機関銃」。(作詞来生えつこ)
当時中学生だった私には、歌詞の良さが分かりませんでしたが、サヨナラを重ねるうちにこの歌の良さが分かるようになりました。
(しかし、「セーラー服と機関銃」という曲名は何とかならないんでしょうか…)

日本にはたくさんの別れ言葉がある。
「さようなら」「さらば」「では」「じゃあ」「また」…
単語だけ取り上げても一体何のことを言っているのか分からない。
Good-byなら分かりやすい。
God be with ye、つまり「神が汝とともにあらんことを」を縮めたものである。
別れは必定なのですよ、あとは神様に任せましょう。という感じですね。



さようなら、じゃあ、また、では…
みなまで言わない。みなまで言えない。
もしやまた再会ができるかも。
いや、また再会しましょう。
だから今日はすべての想いを語らず、じゃあ、また、では…
言葉は曖昧なまま、その先の未来につなぐ余韻を残して…

お互いの、その後の、それぞれの、「物語」は、再び逢うときの大きな「お土産話し」になるのです。

ほら、恋人と駅のホームで「またね」と別れを言った後、「ただいま、信号機の故障でしばらく出発を見合わせております…」などとアナウンスが入った時のことを思い出してください。
友達と「じゃあ」と別れた後、次のブロックでばったり再会した時のことを想像してください。

シラケるでしょう?
だって、もう話す言葉もエピソードも無いのですから。

そう、お互いが別れた後に、あんなことも、こんなこともあればこそ、その後の再会はまた格別なものとなるでしょう。


だから、決して先を急ぐことはありません。
あの人は、あなたが先を急ぐことを望んでいますか。
あなたのこの世での沢山の人生の思い出話しを望んでいるのではないですか。

「じゃあ」「また」「では」のその先の物語へ、お互いは歩みだしました。
でも、またいつか再会したときには、あなたの日々のエピソードがあの方への最高の土産話しになるのです。
そう思えばこそ、日々の小さな出来事もきっと変わって見えてくるはず。

それまで、あなたの心のポケットにあなたの大切な人生の思い出を、詰め込んで、詰め込んで、詰め込んで…。
もうこれ以上ないというほど詰め込んで。

この世のご縁が尽きたその時には、極楽の華の臺(うてな)にて、「あなたと別れた後にこんなことがあってね…」、そう言いながら心のポケットから一つ一つ取り出して、思い出話に花を咲かせてください。

さようなら、じゃあ、また、では…
もうお互いは、その先の物語に向かって歩みだしています。
下を向く日もあるでしょう。
それでも、あなたの一歩一歩はその先の未来に歩みを進めています。
上を向いたら思い出してください。
あの人も、きっと同じ思いでいることを。

「さよなら」は別れの言葉じゃなくて、再び逢うまでの遠い約束…
大切な方と死別されたご遺族へ、この言葉を捧げます
その約束を胸に秘め、今日も一日をあなたらしくお過ごしください。

「サヨナラ」…
これまで耳にした別れ言葉のうちで、このように美しい言葉をわたしは知らない
                          アン・モロー・リンドバーグ



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